前の解説へ 次の解説へ

207 事業承継税制見直しのポイント

平成29年度税制改正により事業承継税制の見直しが行われました。

1. 事業承継税制の概要

事業承継税制とは、後継者が経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を現経営者から相続又は贈与により取得した場合に、相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。認定の要件には、中小企業者であること、上場会社・風俗会社でないこと、従業員が1名以上いること、資産運用会社に該当しないこと等があります。

(1)相続税の納税猶予制度

後継者が納付すべき相続税のうち、相続により取得した非上場株式等(※)に係る課税価額の80%に対応する額が納税猶予されます。

(※)
相続前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済議決権株式総数の2/3に達するまでの部分に限ります。

(2)贈与税の納税猶予制度

後継者が納付すべき贈与税のうち、贈与により取得した非上場株式等(※)に係る課税価額の全額に対応する額が納税猶予されます。

(※)
贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済議決権株式総数の2/3に達するまでの部分に限ります。

(3)認定要件

相続税・贈与税の申告期限から5年間は、下記の要件を満たして事業を継続することが必要となります。

(1)雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
(2)後継者が代表を継続すること
(3)先代経営者か代表者を退任(有給役員として残留可)(贈与税の場合)
(4)対象となる株式を継続して保有すること
(5)上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しないこと、等

2. 事業承継税制見直しのポイント

項目 内 容
災害時等における雇用確保要件の緩和 会社災害等により受けた定の被害の態様に応じ、雇用確保要件の免除等をするとともに、これら被害を受けた会社が破産等した場合には、経営承継期間内であっても猶予税額が免除されます。
相続時精算課税制度との併用 相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられます。

3. 事業承継ガイドライン

中小企業庁は「事業承継ガイドライン」を平成28年12月に策定しました。円滑な事業承継の実現のためには次の5ステップを経ることが重要です。

(1)事業承継に向けた準備の必要性の認識:事業承継診断などの活用
(2)経営状況・経営課題等の把握:経営課題の見える化
(3)事業承継に向けた経営改善:本業の競争力強化等の磨き上げ
(4)事業承継計画策定:社外への引継ぎの場合のマッチング実施
(5)事業承継の実行・M&Aの実行:株式・事業用資産や経営権の承継を実行