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41 相続時精算課税制度のねらい

ご存じの通り、平成 15 年度の税制改正によって、相続税・贈与税の制度が大きく変わりました。相続時精算課税制度の創設、相続制・贈与税の税率の見直しなど、15 年 1 月 1 日以後の相続・贈与から、新しい規定の適用を受けることになります。

相続時精算課税制度は、65 歳以上の親が 20 歳以上の子に財産を贈与した場合に適用できる制度で、親から子への生前贈与をしやすくするために設けられました。110 万円の基礎控除が適用される、従来からの贈与税課税に代えて選択することができます。非課税枠は累積で 2,500 万円、非課税枠を越える部分にかかる贈与税の税率は一律 20 %です。そして、相続時に、生前贈与財産と相続財産とを合計して相続税を計算しますが、すでに支払った贈与税額がある場合、相続税額からその贈与税額が控除されるという仕組みです。

ただし、精算課税制度を選択した場合、非課税枠内の少額の贈与で、税額がゼロでも毎年贈与税の申告が必要です。この制度を選択した親からの贈与には、毎年 110 万円の基礎控除枠を使うことはできません。相続になるまで精算課税制度が適用され続けます。

ですから、この制度は、相続税・贈与税の税額のソントクで利用するものではありません。高齢化で相続による資産移転の時期が遅れてきていて、親世代の資産を有効活用するには生前贈与をしやすくする必要があることから設けられたもので、あくまでも、生前贈与を促進するための制度なのです。若い世代に資産が移転し、それが消費されれば景気にもプラスになり、いずれは税収にも反映されていくということなのです。

とはいっても、非課税で 2,500 万円(住宅資金の場合は 3,500 万円)の贈与が行えるので、実際の相続で相続税の対象にならない層にとっては有利な制度といえます。また、贈与財産の価額は、生前贈与の時の時価とされているので、将来、値上がりが見込まれる財産であれば、制度を利用して生前に贈与した方が有利になります。株式や土地など、底値のうちに贈与すれば、相続時に相続財産と加算される贈与財産は贈与時の低い時価になります。そして、生前贈与ですから、親の意思を明確にして財産の贈与を実行することができる、という点も大きなポイントになるでしょう。

15年1月1日から適応される新税率による速算表

相続税
各法定相続人の取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
3億円以下 40% 1,700万円
3億円超 50% 4,700万円

贈与税
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円