前の解説へ 次の解説へ

72 資産の「取得の日」と「譲渡の日」

そろそろ確定申告が気になる時期となってきました。今回は基本的なことですが、意外と重要な資産の「取得の日」と「譲渡の日」について解説いたします。

1.「取得の日」と「譲渡の日」には幅がある

他から取得した資産の取得の日や資産の譲渡した日は、原則としてその資産の引渡しがあった日によるものとされています。
これは、一般の取引の実態からしても資産の引渡しまでには通常所有権の移転が行われ、また、資産の引渡しと同時に代金の請求ができる状態と考えられることなどから、引渡日を資産の取得日や譲渡日の判定基準としているものです。
ただし、納税者の選択により、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日等をその資産の「取得の日」あるいは「譲渡の日」とすることができる場合がありますので留意する必要があります。

2.留意が必要なケース

他から取得した資産の「取得の日」と「譲渡の日」の若干の幅は、契約日が年内で、引渡日が年越しとなるような場合にその選択を意識すると良いでしょう。

(1)申告年分を選択する
仮に契約日が平成17年で引渡日が平成18年となる不動産譲渡をした場合には、資産の「譲渡の日」を引渡日とすれば平成18年分の確定申告で申告することになりますが、「譲渡の日」を契約日として選択した場合には平成17年分の確定申告で申告することになります。

個人の確定申告は1月1日から12月31日の暦年単位で計算するため、税制改正の内容によってはどちらの年分で申告するかで税負担額が違う可能性があります。このような場合には、税制改正の動向に注目しておくことで、有利な年度で申告するという選択ができます。

(2)取得日と譲渡日の所有期間を選択する
確定申告個人の譲渡所得の計算においては、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものと、それ以外のもので計算方法が変わることとなっています。
つまり取得の日を契約日とし、譲渡の日を引渡日とすることでこの所有期間を長く取ることが可能なケースが出てきます。

例として平成17年中に売買契約をし、資産の引渡が平成18年となる場合に、譲渡日を売買契約日とすると、平成17年1月1日で所有期間を判定することになりますが、引渡日を選択した場合には、平成18年1月1日で所有期間を判定することになりますので、所有期間が5年前後の資産の売買には注意した方が良いでしょう。