前の解説へ 次の解説へ

79 会社法と資本金

1.はじめに

会社法の施行によって法人の資本金はいくらでも良いこととされました。
旧商法、有限会社法上の最低資本金制度はなくなりましたが、そうはいっても資本金の金額は会社規模等を現す重要なバロメーターの一つとみられるため、財務面・信用面等も考慮の上、決定したいものです。また、税制面をみても、資本金の金額によって税率や措置法の特例の適否等、税制上各種の相違点が生ずるため、会社設立などに際しては、資本金の金額をいくらにするのか悩ましい問題となっています。

2.具体的な適用要件等

主な項目ごとに、資本金の金額の大小による税制などの違いをまとめてみました。

項目 制度の内容
法人事業税の
外形標準課税
期末資本金1億円超の法人は、所得割額+不可価値割額+資本割額のいわゆる外形標準課税が適用される。逆に言うと、期末資本金1億円以下の法人は、外形標準課税の適用がなく、所得割のみ。
また、資本割額は、資本金等の金額に対して税率0.2%課税。(地方72の2等)
消費税の
納税義務
資本金1,000万円未満の法人は、設立当初の2年間は納税義務が免除される(消法9)
交際費の
損金算入
限度額
交際費の損金算入限度額は、資本金基準に従う(措法61の4)
・期末資本金1億円以下 4百万円(ただし10%部分は課税)
・期末資本金1億円超は 0
つまり、資本金の金額に反比例して損金算入枠が縮小する
寄付金の
損金算入
限度額
寄付金の損金算入限度額は、資本金等基準と所得基準の合計額の2分の1(法法97)
資本金基準=期末資本金等の金額の2.5/1,000
所得基準=所得金額の2.5/100
つまり、資本金等の金額に比例して損金算入枠が拡大する
中小企業者特例 資本金1億円以下の法人で一定の要件を満たすものは、各種特別償却や特別控除の適用がある(措令27の4等)
法人税率 期末資本金1億円以下の法人の年間所得800万円以下の部分の税率は22%に軽減されている、本則は30%(法法66)
法人事業税率 資本金1億円以下で年所得2,500万円以下の法人等は、税率が軽減されている
法人県市民税率 資本金1億円以下で法人税額が年1千万円以下の法人等は、税率が軽減されている
法人県市民税
均等割
資本金等の金額に比例して税額が増加する
50億円超の場合の均等割年額880万円
(東京特別区従業員50人超のケース)
国税の所轄の
違い
原則として、資本金1億円以上は国税局調査課所管、1億円未満は税務署所管とされている
会社法上の
取扱い
期末資本金5億円以上、又は、負債総額200億円以上は大会社(会社法2六)、それ以外は中小会社
財務・資金面 当該会社の資金計画等から設立時の必要資金が計算され、その内訳として自己資本(資本金と資本準備金)と他人資本の額が計算される
法人成り 個人事業者が法人なりする場合の資本金目安として、個人事業時代の事業主勘定残高相当額とするケースがある
取引上の信用 一般的に資本金が大きい方が信用大と評価される
同業他社との
関係
その会社の業界内での位置づけや同業他社の資本金が参考にされる
(注)資本金等の金額とは、資本金と資本積立金額の合計額をいいます。