前の解説へ 次の解説へ

85 平成19年度税制改正の概要

1.平成19年度主な税制改正の概要

平成18年12月14日、自由民主党より平成19年度税制改正大綱が発表されました。平成19年度の税制改正は、「経済・社会を安定的に支える税制に向けて」をスローガンに次のような目的や観点から検討されています。

  改正等の目的・趣旨 改正事項
経済活性化・
国際競争力の強化
経済の持続的成長を実現するため
・設備投資の促進
・国際競争力の向上
(1)減価償却制度の見直し
中小企業の活力ある発展のため
・財務基盤の強化
・資本蓄積の促進
(2)  留保金課税制度の対象除外
(3) 特殊支配同族会社役員給与の損金不算入制度の見直し
中小企業の早期かつ計面的な事業承継の促進を図るため 
(4) 相続時精算課税制度の自社株特例の創設
(5) 種類株式の評価方法の明確化
 
国民生活への配慮 計画的な持家取得支援の観点から (6)住宅ローン控除制度の見直し
長寿化社会における住宅のバリアフリー改修を支援する観点から (7)バリアフリー改修促進税制の創設
住宅の住替え、新生活への再出発を支援する観点から   
(8) 特定居住用財産の買換え等の長期譲渡所得の課税特例
(9) 居住用財産の買換え等譲渡損失繰越控除等特例
(10) 特定居住用財産の譲渡損失繰越控除等特例
→適用期限3年延長
金融・ 証券税制 証券市場の状況、個人投資家の株式保有状況等を勘案して
(11)  配当・譲渡益に係る軽減税率特例
→適用期限1年延長
納税環境整備 納税者の利便性向上、納税手続負担の軽減等を目的として
(12) 電子申告に係る所得税額特別控除の創設
その他  合併等対価の柔軟化(三角合併等)に伴う国際的租税回避を防止するため
(13) 適格合併等の要件である合併等の対価の範囲の見直し
企業会計基準の変更に伴う規定整備を目的として
(14) ファイナンスリース等の税務上の取扱いの見直し

2.改正の内容

上記の税制改正事項の中から中小企業に関係する税制改正について、以下に改正のポイントを掲げます。

〔1〕 減価償却制度の見直し
(1) 残存価額の廃止
平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産については残存価額を廃止し、100%償却することが可能となります。この場合、定率法の償却率は定額法の償却率を2.5倍した数となります。
(2) 償却可能限度額の廃止
平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産については、1円(備忘価額)まで償却可能です。
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については償却可能額(所得価額の95%)まで償却した後、翌事業年度以降5年間で均等償却します。

〔2〕 留保金課税制度の対象外
資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小企業は留保金課税の適用から除外されます。


〔3〕 特殊支配同族会社役員給与の損金不算入制度見直し
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度について、適用除外基準所得金額が1,600万円(現行800万円)に引き上げられます。

〔4〕 相続時精算課税制度の自社株特例の創設
相続時精算課税制度の適用を受けて受贈者が、平成19年1月1日から平成20年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受ける場合で発行済株式等の総額が20億円未満等の一定の要件を満たすときに限り、次の措置が講じられます。
贈与者の年齢基準 65歳以上→60歳以上
非課税枠 2,500万円→3,000万円

〔5〕

種類株式の評価方法の明確化
会社法の施行により発行が容易になった種類株式のうち、配当優先の無議決権株式、社債類似株式、拒否権付株式については、中小企業の事業承継において活用が期待されることから評価方法が明確化されます。