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95 自己株式の買取り・譲渡

会社法の施行に伴い、株主対策、事業承継対策、相続税納税対策等さまざまな場面で、自己株式の買取り・譲渡を検討するケースが増加しているようです。譲渡する者が法人株主なのか、個人株主なのかにより税務上の取扱いが異なる場合があるため、発行会社への株式の譲渡(自己株式の買取り)により留意すべき主な税務上の取扱いについて説明します。

1.配当とみなされる(みなし配当)ケース

出資先法人から自己株式の取得に伴い金銭その他の資産の交付を受けた場合、交付金銭等の額がその出資先法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった株式等に対応する金額を超える部分の金額については、みなし配当として取り扱われます。

2.譲渡人側の留意事項

(1)譲渡人が法人であるケース

自己株式の譲渡により交付を受けた金銭等のうち、みなし配当として取り扱われる部分については、受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けることができます。通常の株式の譲渡として経理処理したまま決算をむかえ、みなし配当に係る経理処理や受取配当等の益金不算入規定の適用を失念した法人税申告書を作成しないように留意が必要です。

(2)譲渡人が個人であるケース

【1】みなし配当課税を受ける自己株式の譲渡
自己株式の譲渡により交付を受けた金銭等のうち、みなし配当として取り扱われる部分については配当所得として配当控除の適用を受け、総合課税により税額が計算されます。給与所得や不動産所得等と合算されることから累進税率の適用により、みなし配当課税を受けることにより所得税額等が増加する場合が多いので、個人が保有している株式を発行会社に譲渡する場合には発生する所得税等も考慮して検討することが重要となります。

【2】みなし配当課税を受けない自己株式の譲渡(みなし配当課税の特例により譲渡所得となる自己株式の譲渡)
相続等により財産を取得した個人でその相続等について納付すべき相続税額のある者が、その相続等により取得した株式をその相続等にかかわる相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに発行法人へ譲渡した場合には、上記1のみなし配当課税の適用に該当する場合においても株式等の譲渡所得として取り扱われます。したがって、税額計算においては分離課税により課税され、さらに相続税の取得費加算の特例規定が適用されるため、みなし配当課税の特例により譲渡所得となる自己株式の譲渡は、相続税の有効的な納税対策の一つとしてあげられます。

3.発行会社(買取る側)の意事項

(1)みなし配当課税となるケース

法人もしくは、個人からの自己株式の買取りにより配当とみなされる金額が発生する場合には、みなし配当金額の20%相当額の源泉徴収義務が生じます。
通常の株式の売買取引として源泉徴収を失念しないよう留意が必要です。

(2)みなし配当課税とならないケース(特例適用となる買取り)

上記2(2)【2】に該当するみなし配当課税の特例が適用される場合には、源泉徴収義務が発生しないため、支払調書等の作成は不要である代わりに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を非上場株式の発行会社の所轄税務署へ提出します。