前の解説へ 次の解説へ

122 納期限までに納付できない場合の延滞税

個人の確定申告の時期となりましたが、平成21年の税制改正において上場株式等の譲渡損失を配当所得と通算する改正が行われており、今回はこの制度について説明します。

1.上場株式等の譲渡損失と配当所得との通算

確定申告書を提出する居住者の平成21年分以後の各年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、その上場株式等に係る譲渡損失の金額は、その年分の上場株式等に係る配当所得の金額を限度として、上場株式等に係る配当所得の金額の計算上控除することができます。
この場合の上場株式等に係る譲渡損失とは、平成21年分の確定申告の場合には、平成18年分、平成19年分、平成20年分において生じた上場株式等の譲渡損失で、確定申告において譲渡損失の繰越控除の規定によって繰越された譲渡損失が含まれることになります。

2.譲渡損失と通算する配当所得の留意点

上場株式等の譲渡損失については配当所得と通算できるわけですが、全ての配当所得と通算が可能ではない点に留意する必要あります。
平成21年分の配当所得については、新たに申告分離課税という仕組みが創設されており、配当所得の申告の方法としては、申告不要を選択する方法、確定申告を選択するが他の所得と合算して申告をする方法、確定申告を選択するが新たに創設された申告分離課税を選択する方法の3つの方法があることになります。

このうち、上場株式の譲渡損失と通算できるのは、申告分離課税を選択した配当所得となっていることから、配当所得の申告方法を選択する際には必ずこの申告分離課税を選択する必要があります。

申告分離課税を選択した場合には、総合課税の場合と違い他の所得との通算ができず、他の所得と区分して計算が行われます。また、配当控除も受けることができなくなるため、結果として上場株式等の譲渡損失と配当所得との通算を行った方が有利かどうかは一概にはいえませんので、しっかりとシミュレーションして選択する必要があります。

また受け取った配当について、確定申告をするか申告不要を選択するかは1回の支払いごとに選択できますが、確定申告を選択した場合で、総合課税の方法を選択するか申告分離課税の方法を選択するかは、確定申告する上場株式全てについてどちらかに統一する必要がありますので留意が必要です。

証券に係る税制については、ここ数年で何回も改正されて複雑になっていますので、有利な方法をしっかりと選択できるように気をつけたいものですね。