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22 会社が社長から土地を借りる場合の留意点

本社建物や工場などを建築するために、社長が所有する土地を会社が借り受け建物の敷地として使用するという例はそうめずらしいものではありませんが、この場合、建物の所有者である会社にその土地の借地権という権利が帰属するのが原則です。

建物が建築されますと、建物所有者がその土地を使用することになり、土地の所有者は権利の上では所有者であっても、その土地を自由に使用することはできなくなります。

このため、他人同士で貸借を行う場合は、借主は借地権利金を支払い、以後も応対の地代が支払われるのが一般的です。

社長及び一族で全株(有限会社では、全出資)を有する多くの中小企業においては、社長の意思=会社の意思ということから、社長は会社に貸した土地をいつでも元の状況に戻すことができると考えられますので、あたかも親の土地を子にタダで貸し与えるのと同様と錯覚してしまいがちですが、そうはいきません。

他人に貸すのも、自分の会社に貸すのも、ちがいはまったくありません。いかに自分の会社であっても、法律上は社長個人と会社とは別の人格を持つ存在であり、親子間のような関係にはならないからです。

したがって、法人税の計算では、会社が社長から借地権利金を支払わずに土地を借りた場合、会社に帰属してしまう借地権の価額相当額を利益に計上させることを建前としています。

もっとも、すでに貸借が行われているけれど(税務署から)借地権を利益に計上して下さいとはいわれていないといったケースも、実際には見受けられるところではありますが、だからといって安心できるのもではないのです。

なぜかといいますと。眼には見えないながら、借地権が会社に帰属していることは事実であり、その会社の株価を算定するに際してはその価額が資産にとり込まれますし、さらにはその土地を社長に返すに当たっては、社長からその時の相場に応じた立退料(借地権の対価)を支払ってもらわなければなりません。土地を借りる時は反対の結果が待ち受けているわけです。

もし、立退料をもらわずに土地を返した場合には、社長が利益を受けたこととなり、社長に所得税の問題が生じます。

これから社長の土地を借りようとする場合はもちろん、すでに土地を借りている場合でも、税務の対応策を慎重に検討する必要がありそうです。