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23 贈与税の配偶者控除の特例

“内助の功”なる言葉、今や死語になってしまいましたが、驚くべきことに、 税金の世界ではなお存在が示されています。贈与税の配偶者控除の特例がその典型です。

この特例は、夫から妻(妻から夫でもかまいませんが)へ贈与する居住用の不動産 または居住用不動産の取得資金を対象とするものです。 平らたくいえば、現在夫婦で住んでいる夫名義の住宅とその敷地(夫婦共有の場合は、 それぞれの夫の持分)を贈与するか、住宅の新築、建て替えに際しての資金贈与について 特例を受けることができます。

そこで、特例の内容ですが、贈与の額のうち2,000万円までは贈与税をかけないというものであり、これに贈与税本来の基礎控除額(税をかけない部分)となる110万円をプラスしますと、2,110万円以内の贈与なら配偶者間の資産移動が無税でできるということになりましょう。

ただ、すべての夫婦間でこの特例が認められるわけではなく、婚姻期間20年以上の条件がつけられ、しかも一生に一回の限定となっています。5年や10年程度の“内助の功”ではまだ報いるには足りないということなのかもしれません。

特例条件は婚姻期間20年以上

ところで、贈与税を上手に利用するコツは「お金よりモノを」が定説です。この特例においては「不動産優先」ということになります。2,000万円の資金贈与はあくまで2,000万円の贈与ですが、2,000万円で建てた家の評価(価額の見積り)はおおよそ60%程度の見当です。逆に見れば、3,000万円で建てた家を贈与すれば、2,000万円の中に納まってしまうことになります。

ならば、住宅資金の贈与よりは建築後に家を贈与すればよいという理屈も考えられるところですが、この考え方はまず受け入れてはもらえません。

なぜならば、家を建てるに際しては奥さんの意向によるところが大ですから、資金贈与を受けて建てた場合と何ら変わりはないと判断されるからです。奥さんは一切口を出さなかった旨の証明ができれば別ですが、それこそ至難のワザというべきでしょう。家の贈与として認めてもらうためには、建ててから2年ぐらいの間を置くべきといわれています。

なお、この特例を受けるためには、納める贈与税がなくとも、贈与税の申告が必要です。贈与を受けた日の翌年2月1日から3月15日までが申告期間となっていて、一定の書類を添付しなければなりません。