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231 平成31年度税制改正大綱のポイント −相続税・民法関連−

平成31年度税制改正において、民法の改正に伴う税制上の規定が整備されました。

1. 民法改正に伴う配偶者居住権の取扱い

(1)配偶者居住権の概要

配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は、遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができるようになります。被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。この改正は2020年4月1日に施行されます。

事例:相続人が妻及び子で遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)だった場合
妻と子の相続分=1:1 (妻2,500万円、子2,500万円)

現行制度 配偶者が居住建物を取得する場合には、他の財産を受け取れなくなってしまいます。
妻:自宅2,000万円、預貯金500万円 子:預貯金2,500万円
改正制度 配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになります。
妻:配偶者居住権1,000万円、預貯金1,500万円
子:負担付所有権1,000万円、預貯金1,500万円

(2)配偶者居住権の評価方法

改正民法により配偶者居住権が盛り込まれたのに伴い、相続税における配偶者居住権等の評価方法等が規定されました。

建物敷地の現在価値 − 負担付所有権の価値 (※)=配偶者居住権の価値
(※)
負担付所有権の価値は建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して求めます(負担消滅時までは所有者は利用できないので、その分の収益可能性を割り引く必要がある)。

2. 特別の寄与の制度の創設

(1)概要

相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。この改正は2019年7月l日に施行されます。

事例:亡き長男の妻が、被相続人の介護をしていた場合で相続人は長女と次男の場合

現行制度 相続人以外の者は、被相続人の介護に尽くしても相続財産を取得することができません。
  • 被相続人が死亡した場合、相続人(長女・次男)は、被相続人の介護を全く行っていなかったとしても、相続財産を取得することができる。
  • 他方、長男の妻は、どんなに被相続人の介護に尽くしても、相続人ではないため、被相続人の死亡に際し、相続財産の分配にあずかれない。
改正制度 相続開始後、長男の妻は、相続人(長女・次男)に対して、金銭の請求をすることができます。
⇒介護等の貢献に報いることができ、実質的公平が図られます。

(2)新たに相続税の納税義務が生じる者

特別寄与者へ新たに相続税の申告義務が生じた場合には、当該事由が生じたことを知った日から10月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。