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外貨建取引を行った場合の税務上の取扱い


今年に入ってからの円安の流れは一向に収まる気配がありません。輸出を行う企業では円安による増収増益の傾向が見受けられるものの、一方で輸入品やエネルギー資源等そのものの価格高騰に加えての円安の影響による物価上昇も止まらず、事業者、消費者ともに大きな負担となっています。税務上、外貨建取引を行った場合の換算方法等は次のように定められており、為替相場の変動は課税所得に影響を与えることになります。

(1)外貨建取引を行った場合の円換算

外貨建取引を行った場合のその円換算額は、原則として、その外貨建取引を行ったときにおける外国為替の売買相場により換算した金額によることとされています。具体的には、取引日における対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)によって円換算を行いますが、継続適用を条件として下記によることも認められます。

  • 売上その他の収益又は資産⇒取引日のTTB
  • 仕入その他の費用(原価及び損失を含む)又は負債⇒取引日のTTS
  • 取引日の為替相場以外で、外貨建取引の内容に応じて、それぞれ合理的と認められる取引日の属する月の前月末日、取引日の属する週の前週末日、当月又は当週の初日におけるTTS、TTB、TTM
  • 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように、1ヶ月以内の一定期間におけるTTS、TTB、TTMの平均値

(2)事業年度末に外貨建資産、負債を有する場合

外貨建取引は発生時に上記(1)により円換算を行う(発生時換算法)ことになりますが、法人が期末に外貨建資産等を有する場合には、その外貨建資産等の種類によっては期末時点の外国為替の売買相場により円換算を行う必要があります(期末時換算法)。法人税法では、次に掲げる資産等の種類に応じて採用できる換算方法が定められています。

種類 発生時換算法 期末時換算法
外国通貨 ×
外貨預金 短期(満期日が1年以内に到来)
長期
外貨建債権債務 短期(受取日又は支払日が1年以内に到来)
長期
外貨建有価証券 売買目的 ×
償還期限及び償還金額の定めあり
上記以外 ×
※1
◎又は○については、いずれの換算方法も認められます。採用する換算方法を納税地の所轄税務署長に届け出る必要がありますが、届出がない場合には◎の方法(法定換算方法)によることとされます。
※2
期末時換算法は、原則として、事業年度末日のTTMにより円換算することになりますが、継続適用を条件として外貨建資産は事業年度末日のTTB、外貨建負債は事業年度末日のTTS、又は、事業年度末日を含むの1ヶ月以内の一定期間におけるTTM、TTB、TTSの平均値によることもできます。