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28 平成14年度 相続税の改正

このたびの平成14年度税制改正では、相続税についても若干の改正が行われました。中小企業者の事業承継に大きな負担となる相続税については、各種の特例措置の見直しを含めて、 全面的な検討が必要であるといわれていましたが、今回の改正では最高税率70%の引き下げや、税率区分の見直しなどは見送られることになりました。 特例措置が設けられます

そこで、当面の措置として、非上場の同族会社株式の相続税評価額を減額する特例措置が新しく設けられることになったのです。

この特例は、相続税の対象となる株式の相続税評価額を10%軽減するのもですが、

(1) 発行済株式の総額(相続税評価額による価額)または出資総額が
  10億円未満であること、

(2)「被相続人」と「被相続人と生計を一にする親族」が、発行済株式数
  または出資総額の50%以上を所有していること、

が適用の条件とされています。

そして、この条件を満たす株式で、発行済株式数の3分の1までの部分について、3億円を限度として、相続税評価額を「10%減額する」とされたわけです。

この特例は、事業承継の際の相続税を軽減するものですから、相続人側にも要件が課されています。相続により取得したその株式を、親族である相続人が引き続き所有し、 かつ、相続人が会社の役員として経営に従事していたことが必要とされています。

ただし、この株式10%評価減の特例は、被相続人の居住用宅地については240平方メートル、事業用宅地については400平方メートルを限度に評価額を80%(または50%)減額できる 「小規模宅地の課税価格の特例」(小規模宅地等の評価減)との選択適用とされていますので、どちらが有利か検討して適用することとなります。

非上場株式の相続税に新たに減額措置が講じられたとはいっても、財務省の試算では減税額は初年度が20億円、平年度40億円という規模にとどまっています。相続税の軽減については、 小規模宅地特例の対象面積の拡大などがたびたび行われてきており、現在では事業を継続する場合には400平方メートルにまで引き上げられていますが、今後も引き続き、相続税制の抜本的な改正を巡る議論が行われていくことになるでしょう。