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47 外形標準課税のあらまし

平成 16 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度より、法人事業税の外形標準課税が適用されます。通常の1年決算法人の場合、最初に申告する時期までまだ1年程度の期間があるものの、外形標準課税の対象を確認しておきましょう。

外形標準課税の対象は、所得課税法人のうち、資本の金額または出資金額が1億円超の法人に限定されています。ここで注意したいのが、外形標準課税の対象を判定するのはあくまで「資本の金額または出資金額」であり、地方税の均等割の計算で馴染みのある「資本等の金額」ではないということです。

例えば、資本金が 1 億 2,000 万円のA社と、資本金は1億円で資本準備金を 2,000 万円持つB社では、「資本等の金額」は両社とも 1 億 2,000 万円となります。しかしながら、A社の資本の金額は 1 億 2,000 万円で外形標準課税の適用を受ける会社となりますが、B社は資本の金額1億円以下ということで外形標準課税を受けない会社となるのです。外形標準課税の対象となるかどうかの判断は、原則として各事業年度の終了の日における資本の金額または出資金で判定されることも覚えておきたいポイントです。

外形標準課税の適用を受ける法人の場合、所得に対する標準税率が 9.6% から 7.2% へ引き下げられる反面、所得以外の基準で課税される資本割と付加価値割が別途設けられることになります。所得に対する税率が下げられたことで、所得に対する法人事業税の減少分が、資本割、付加価値割による法人事業税の増加分を上回るかどうかで、増税になることも減税になることもありえることになります。簡単に言えば、所得の多額な法人は外形標準課税により減税となりやすく、逆に所得の少ないまたは赤字の法人は外形標準課税により増税になりやすいと考えられるのです。

先のとおり、対象法人の判定が原則として事業年度終了の日の現況で判断されるため、外形標準課税の適用を受けた方が有利な法人では、期末までに商法上適正に増資を行うことで、外形標準課税の対象法人になることが可能となり、逆に不利な法人は減資を行うことで外形標準課税の適用としないことも可能となります。
現在の資本の金額または出資金額から、外形標準課税の対象となるかならないかを意識するだけではなく、そもそも外形標準課税の適用が有利か不利なのかを考慮した上で、今後の資本政策を考えていくことが必要なのかもしれません。

現行の事業税標準税率
外形標準課税による税率
所得課税
所得割
付加価値割
資本割
所得のうち年800万円を超える金額
9.6%
7.2%
付加価値額
X 0.48%
資本等の金額
X 0.2%
所得のうち年400万円を超え、年800万円以下の金額
7.3%
5.5%
所得のうち年400万円以下の金額
5.0%
3.8%