前の解説へ 次の解説へ

51 株主総会の決議要件に注意

日本では3月決算の会社が比較的多いため、これからの時期、株主総会の準備に追われる方も多いと思います。株式会社は数多くの株主が出資者となって組織されている会社ですので、その会社の基本的意志決定をする株主総会では、持株数による多数決によって決議がおこなわれます。株式会社は営利を目的としているので、基本的意志決定は資本の多寡によって行われることが合理的だと考えられているためです。しかし、近年商法改正が相次いで行われているため注意が必要です。例えば、自己株式を取得した場合で、議決権の総数が変わってしまった場合に、決議に影響をおよぼす可能性があるのです。そのような観点から株主総会における各決議の定足数等の決議要件を満たすがどうかを確認することが必要となります。

1.決議の種類

  1. 普通決議
    株主総会における決議は、原則的に定足数として総株主の議決権の過半数を有する株主が出席する必要があり、その議決権の過半数をもって決議します。この原則は定款で軽減することができます。普通決議で決議される主な事項としては、取締役・監査役の選任、取締役・監査役の報酬の決定、計算書類、利益処分案の承認等があげられます。

  2. 特別決議
    会社の基本的意志決定で重要な事項については、定足数として総株主の議決権の過半数をもつ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上をもって決議します。特別決議についても平成14年の商法改正により、定款によって定足数を総株主の議決権の3分の1まで引き下げることができます。特別決議で決議される主な事業としては、定款の変更、資本の減少、営業の譲渡、会社の解散・合併・分割等があげられます。

  3. その他の決議
    その他の決議としては、発行済株式総数の3分の2以上の多数による決議が必要とされている利益相反取引をした取締役の責任を免除する決議、総株主の過半数で、総株主の議決権の3分の2以上の多数による決議が必要とされている株式譲渡制限を規定する決議等があげられます。また、平成14年の商法改正により、書面等による決議も可能となりました。
株主総会の決議要件 説明図

2.議決権について

議決権の数は株主数によってではなく、1株について1個となります。また、1単元の株式数を定めた場合には、1単元の株式について1個となります。ただし、近年新聞紙上等で盛んに取り上げられている自己株式を取得した場合や、相互保有の株式等については、例外的に議決権が制限される場合があるので注意が必要です。

  1. 自己株式
    会社が保有している自己株式は、議決権が認められません。しただって定足数の計算における総株主の議決権にも含まれません。

  2. 相互保有株式
    会社(甲)が他の会社(乙)の株式の議決権の4分の1を越える株式等を有する場合に、他の会社(乙)が、株式を保有するその会社(甲)の株式については、議決権が認められません。

  3. 議決権制限株式
    平成13年、14年の商法改正により、特定の議決事項のみについて議決権を制限したり、議決権の全くない無議決権株式を発行することが可能となりました。この場合、議決権の無い株式は定足数の計算における総株主の議決権にも含まれません。