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56 減損会計における税務処理

投資家に的確な情報を提供し、会計基準の国際的調和を図るために、減損会計が導入されます。固定資産の減損会計とは、資産または資産グループの収益性の低価により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるよう帳簿価額を減額する会計処理のことをいいます。

平成18年3月期より原則としてすべての会社に適用されることになりますが、強制適用されるのは、証券取引法や商法の規定により公認会計士の外部監査が必要となる会社となり、また、連結財務諸表作成会社の子会社、関係会社についても事実上、適用せざるを得なくなると考えられます。

保有する固定資産に減損の兆候があるか等の一定のステップを経て減損処理を行う場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとなります。

では、この減損損失は税務上どのような取扱になるでしょうか。法人税法では、原則として資産の評価損を損金の額に算入することは認められていません。
(注)減損損失は、税務上、資産の評価損等に該当するため、原則は有税処理することとなります。しかし、下記のような特別な事実が生じた場合には、帳簿価額を下回った法人税上の時価までの金額は損金に算入できことになります。

当該資産が災害により著しく損傷したこと
当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること
当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
国内法人について会社更生法、商法の規定等により当該資産につき評価換えをする必要が生じたこと
からまでに準ずる特別の事実
. 法人の有する固定資産がやむを得ない事情によりその取得の時から1年以上事業の用に供されないため、当該固定資産の価額が低下したと認められること
. 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより、固定資産につき評価換えをする必要が生じたこと


(注)有税処理となる減損損失は、税務申告上、減価償却費の超過額として取り扱われます。翌期以降は減損損失計上前の帳簿価額による税務上の減価償却費と減損損失計上後の帳簿価額により減価償却費との差額が税務申告上認容されることとなります。