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90 特定同族株式等の贈与を受けた場合の特例の検討

平成19年度の税制改正において、中小企業の事業承継の円滑化のために、早期かつ計画的な事業承継の促進を図る見地から、特定同族株式等にかかわる相続時精算課税の特例が創設されました。

1.特例の内容

平成19年1月1日から平成20年12月31日までの間に20歳以上である子が60歳以上の親から次の要件を満たす特定同族株式等の贈与を受ける場合には、その特定同族株式等については2,500万円の特別控除額のほかに500万円の特別控除額を控除することができます。

2.適用要件

(1) 特定同族株式等の贈与価額の合計額が500万円以上となる贈与であること
(2) 贈与を受けた年の12月31日においてその特定同族株式等(注1)にかかわる法人の役員等であること
(3) 確認日(注2)の翌日から2ヶ月以内に確認書(注3)を納税地の所轄税務署長に提出することが確実と見込まれること
(4) 贈与の時において特定同族株式等にかかわる法人の代表者が二人以上おらず、かつ、贈与の直前及び贈与の時においてその法人の発行済株式または出資の時価総額(相続税評価額による総額)の合計額が20億円未満であること
(5) 贈与者である親が、贈与の直前において、法人の代表者であり、発行済株式の総数または出資の総額並びに議決権の50%超をそれぞれ有していること
(6) この特例の適用を受けることについて、贈与者である親の推定相続人のすべての同意を得ていること

(注1) 特定同族株式等:
株式や合名会社・合資会社の出資で、議決権の制限がなく、上場株式等でないもの
(注2) 確認日:
贈与をした年の翌年3月15日から4年を経過する日
(注3) 確認書:
確認日において、子が上記(5)の要件を満たし、かつ、その法人の代表者が二人以上いない事などについて、その法人の本店または主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長が確認したことを証する書類

3.適用手続

贈与税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載するとともに、相続時精算課税選択届出書、法人の定款の写し、登記事項証明書等の一定の書類の提出が必要です。

4.適用における留意事項

(1) 評価額の増減があたえる影響

贈与者である親に相続が発生した場合、相続時精算課税の適用を受けて取得した特定同族株式等は贈与時の評価額において相続税の課税価格に算入されます。特定同族株式の評価は財産評価通達を基に、評価時点での会社規模・業績等が評価額に反映されるため、贈与時の評価額と相続時の評価額とは異なることが通常です。

株価の増減による影響は、この特例の適用を受ける場合においても、特例適用を受けない通常の相続時精算課税の適用を受ける場合においても同様に発生します。

【贈与時評価額<相続時評価額】
贈与後、会社の業績が上昇した等の理由から、相続時の評価額の方が高くなった場合には、贈与時評価額と相続時評価額との差額分は、相続税の課税価格に算入されないため、税務上のメリットが発生します。

【贈与時評価額>相続時評価額】
贈与時の評価額の方が、相続時評価額より高額であったとしても贈与時の評価額により相続税の課税価格に算入されるため、相続税額を比較した場合、この特例の適用を受けたことにより税額が大きくなってしまいます。

(2) 他の特例との併用適用

この特例の適用を受けた場合には、贈与者である親の相続税の課税価格の計算において小規模宅地等の特例や特定事業用資産の特例の適用を受けることができません。

この特例の適用を受ける者が、小規模宅地の特例適用可納宅地を相続したとしても、小規模宅地の特例の適用が不可となってしまいます。このため、贈与者である親の財産の種類・状況、相続税の評価額等を確認し、贈与者である親の他の推定相続人が承継予定される財産、適用可能な特例と相続税額への影響等をシミュレーションした上で、この特例の適用を受けるメリットデメリットを整理して、適用にあたっては充分な検討の下、慎重な判断が求められます。