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91 約80年ぶりに全面改正された信託法

大正11年に成立した信託法についての改正案(新信託法)が平成18年12月8日に国会で可決成立し、約80年ぶりに信託法が全面改正されました。新信託法では委託者が自ら受託者となる自己信託や、事業自体を信託したのと同様な状態とするいわゆる事業信託が可能となりました。

信託とは、委託者(一定の財産を有する者)が自己の財産を自分で管理、処分しないで、信託行為(信託契約、遺言等)によって受託者(信託会社等)にその財産を移転し、受託者は委託者が指名した受益者(財産から生ずる利益を受ける者)のために信託目的に従ってその財産の管理、処分を行う制度です。

上記の基本スキーム以外にも委託者と受益者が同一である場合や委託者と受託者、受益者が複数存在する場合等があります。

信託の大きな特徴としては、委託者の財産の名義が受託者に移転し、受託者名義となる点があります。他人による財産の管理、処分の制度としては、民法上の代理等もありますが、民法上の代理では財産の名義は代理人には移転しません。また、信託では受託者だけが信託目的に従って信託財産を管理、処分することができます。

信託の主な機能としては、財産の管理機能、倒産隔離機能等があげられ、それらの機能を利用し不動産信託や投資信託、年金信託、公益信託等の信託があります。

新信託法のポイントとしては、大きくは以下の3つがあげられます。また、現行法ではカタカナ表記ですが新信託法では口語体に改められました。

〔1〕新しいタイプの信託制度を整備

新しい時代のニーズに対応するための新しいタイプの信託制度を整備しました。具体的には、一定の要件の下に自己信託を創設(信託法の施行から1年後に施行)、信託前に生じた委託者に対する債権であって、その債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めによるいわゆる事業信託の整備、受益者の定めのない信託である目的信託の整備、信託財産のみを責任財産とする限定責任信託の創設、受益権を有価証券化する受益証券発行信託の創設等があります。

〔2〕受託者の義務等の内容を適切な要件の下で合理化

当事者の私的自治を基本的に尊重する観点から、受託者の義務等の内容を適切な要件の下で合理化しています。具体的には受益者保護のための一定の権利については強行法規として定める一方、忠実義務に関する規定や自己執行義務に関する規定等を合理化しています。

〔3〕受益者の権利行使の実効性、機動性を高めるための規律を整備

受益者のための財産管理制度としての信頼性を確保する観点から、受益者の権利行使の実効性、機動性を高めるための規律を整備しています。具体的には、帳簿等の作成等、報告及び保存の義務の整備、二人以上の受益者による意思決定の方法の特例の整備、信託管理人、信託監督人、受益者代理人の整備等があります。

新信託法は多様な信託の類型が可能になるなど信託の使い勝手が向上し、信託の利用機会が大幅に拡大することが期待されています。新信託法は平成18年12月15日に公布され、公布の日から1年6ヶ月以内に政令で定める日から施行されることになっています。