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99 ふるさと納税を考察する

ふるさと納税は、平成20年度税制改正で創設される予定の税制で、個人住民税における寄付金控除の新しい類型です。その内容としては、実質的に寄付をした地方公共団体に納税したのと同じ効果が得られるように税額控除方式がとられています。

〈1〉対象となる寄付先

ふるさと納税は、都道府県、市町村に対する寄付金が対象になります。

寄付先は特に制限されていないので、ご自身の出身地はもちろん、好きな地方公共団体を選択することも可能です。

〈2〉控除額の計算は

ふるさと納税は、所得税の寄付金控除と合わせて利用するので、若干複雑な計算方式をとっています。また、住民税の10%までとする限度額が設けられていますが、基本は寄付=住民税納税の前払いとするものです。

一般的な控除額の計算は、下記の(1)+(2)になります。なお、ケースは少ないと思いますが分離課税所得しか有しない場合などは計算方法が異なります。

表1 <ふるさと納税における寄付金控除額>
(1)(地方公共団体に対する寄付金−5,000円)×10%
(2)(地方公共団体に対する寄付金−5,000円)×控除割合50%〜90%(※)
※(2)の控除割合は、課税所得金額に応じた下記割合になります。

課税所得に応じた控除割合表
以下 控除割合
  195万円 85%
195万円 330万円 80%
330万円 695万円 70%
695万円 900万円 67%
900万円 1,800万円 57%
1,800万円   50%
(2)は、住民税所得割の10%が限度とされます。
(1)と(2)の合計額は、総所得金額の30%が限度とされます。


〈3〉事例

事例でみてみましょう。年間の給与所得500万円のサラリーマンが、故郷の地方公共団体に5万円を寄付した場合の所得税と住民税の軽減額を試算してみました(計算の簡略化のため寄付金以外は基礎控除のみとしています)。

このケースでは、所得税の寄付金控除(所得控除)により 9,000円の税額軽減となり、住民税の寄付金控除(税額控除)により 36,000円、合わせて45,000円の税額軽減効果が得られました。つまり、寄付をした50,000円のうち足切額5,000円を超える45,000円について地方公共団体に納税したことと同じ効果が寄付金控除で得られたことになります。

但し、このケースはモデルケースで、必ずしも納税と同じ効果が得られない場合もあります。

それは、表1の計算で示したように、(2)の控除額は所得割の10%が限度とされていること、及び、(1)と(2)の合計は総所得金額の30%が限度とされているためです。従って、所得に対して高額な寄付をしたとしても、その全額がふるさと納税の対象にならないことがある点に注意が必要です。

自治体に5万円寄付
給与所得500万円のケース

<所得税>
  給与所得 5,000,000円
  寄付金控除 45,000円
  基礎控除 380,000円
  課税所得 4,575,000円
  所得税 20%−427,500円 487,500円
  寄付による所得税軽減 9,000

<住民税>
  給与所得 5,000,000円
  基礎控除 330,000円
  課税所得 4,670,000円
  住民税所得割 467,000円
(1) (50,000円-5,000円)×10% 4,500円
(2) (50,000円-5,000円)×70% 31,500円
  (1)+(2)= 36,000円
  (2)は、所得割×10%が限度 46,7OO円
  >31,500円 ∴31,500円
  (1)+(2)は、総所得×30%が限度 1,500,000円
  >36,000円 ∴36,000円
  寄付による住民税軽減 36,000
  寄付による税軽減額合計 45,000
  50,000円−5,000円と一致

(4)時期は

ふるさと納税は、平成21年度分住民税から適用されます。