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07 非上場株式の相続税評価

3つの原則的評価方法
相続税の課税価格は、相続・贈与等により取得した財産を、取得したときの“時価”で評価することとされています。

株式では、上場株式であれば相続が開始した日の市場の終値又は前2ヶ月を含めた3ヶ月平均価格などで、また店頭管理銘柄は証券業協会が公表する取引価格などにより評価することになりますが、市場での取引価格を有しない非上場株式については、国税庁が評価方法に関して取り扱いを定めており、これにより求めた価格が課税時期の時価=課税価格とされます。

具体的には、発行会社の規模に応じ、次の3つの原則的評価方法が適用されます。

大会社は類似業種比準方式  大会社=類似業種比準方式

上場会社の月々の平均株価を基に評価します。平均株価は、モデル会社を選定したうえで国税庁が業種毎に2ヶ月分づつ公表しています。また、評価に当たっての計算要素として、業種毎に1株当たりの「配当金額」「利益金額」「純資産価額」(簿価ベース)」も算定され、これらは年間を通して固定された数値となります。

具体的には、相続開始月の平均株価に{(評価会社の配当金額/モデル会社の配当金額)+(評価会社の利益金額/モデル会社の利益金額)+(評価会社の純資産価額/モデル会社の純資産価額)}で求めた割合等を加味して、1株当たりの価格を求めます。

※今年1月以降の相続等から、この算式が改正され、従来よりも「利益金額」を重視するかたちに改められています。ただし、7月31日までの相続等では、改正前の算式で評価することも認められます。


中会社は類似業種批准方式と純資産価額方式
中会社=類似業種比準方式と純資産価額方式との併用

の類似業種比準方式で求めた価額との純資産価額方式で求めた価額を基に一定の斟酌率(「Lの割合」と呼ばれ、0.9、7.5、0.6の3段階で認定されています)を乗じて1株当たりの価格を求めます。


小会社は純資産価額方式
小会社=純資産価額方式

相続開始時点で発行会社が保有する資産の相続税評価額から負債等を差し引いた残額=正味の財産価格(純資産価額)を発行済み株式数で割って、1株当たりの価格を求めます。※会社規模の大・中・小の区分は、国税庁が通達で業種に応じ、資本金・従業員数による目安を設けています。


配当・利益・純資産価額が0の大会社は?
以上が原則的評価方法ですが、大会社では純資産価額方式、小会社は併用方式の選択もそれぞれ可能とされています。

また、計算要素となる「利益」「配当」「純資産」のうち3つが0の大会社には類似業種比準方式は適用されず、純資産価額方式により評価することになります。

なお2要素0の会社株式は、従来はやはり純資産価額方式のみが適用されましたが、今年1月以後の相続等から、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式が新たに認められることになりました。